記録ではなく大事な記憶

お客様の死

去年からお世話になっていたお客様がお亡くなりになられました。

昨日奥様がご来店された時に報告してくださったのです。

主人が亡くなった。と・・・

今まで一度も美容室に行ったことが無かったご主人。

ずっと行ってみたいと念願にしてくれていたようで、去年初めてご来店いただき、それはそれは勇気を出して来ていただいたのだろうと、ぎこちない仕草でそれはすぐ感じ取れました。

カットが仕上がったときに「堺雅人みたいになりましたねー」

と感想を述べさせてもらい、その時のご主人のえも言えぬ表情、鮮明に覚えています。

後日、とても満足して喜んでいたと奥様伝いで伺いました。

それからほどなくし、がん治療の為に髪を一部失いました。

そういった状態でも大丈夫なのかとこちらに気を使いながらも来ていただけたのが最後でしたね。

この日も行くか悩んだけどやっぱり行って良かった。と言っていただけていたそうです。

奥様はとても気丈で、覚悟はできてたんだと思いますが、淡々と、でも感情を込めて優しい言葉で最後の報告をしてくださいました。

ぼくに対しての労いの言葉なんて必要ないのに逆に気を遣ってもらい本当に有難うございました。

美容師として最後に髪を担当できたこと

とても光栄でした。

人の人生、自分ではその重さを計れません

それでも

ほんの少し

ほんの少し

ではありますが、気分が晴れる瞬間を一時であっても創れたのかなととても美容師冥利に尽きるものでした。

お客様と店員の関係性を凌駕できる美容師という仕事の素晴らしさと

人に関わることの大切さ

人を大事に想えることの尊さ

亡くなったから方から得る学びはとても大きいものです。

髪を相手に作業をしてはならない

人を相手に心ある仕事を

こういった記事は書くか悩んだのですが記録としてではなく、自分にとって大事な記憶として残したく思いました。

心よりご冥福をお祈りしています。